統合失調症
統合失調症の有病率は約1%であり、およそ100人に1人の割合です。統合失調症はあらゆる社会と地理的地域に見られ、発生率および有病率は世界中でほぼ同様です。
統合失調症に性差はありませんが、発症時期や経過には性差を認めます。一般的に男性の方が女性より発症が早く、発症年齢のピークは男性で10~25歳、女性では25歳~35歳といわれています。また女性の発症年齢は二峰性であり、中年以降にも発症のピークがあります。そのほか、10歳以前、60歳以後の統合失調症の発病はとても稀であると考えられています。
統合失調症とは、幻覚、妄想、まとまりを欠いた発語、まとまりのない、もしくは緊張病性の行動、陰性症状(感情の平板化、意欲欠如)の症状のいずれかが認められます。
統合失調症で見られる最も一般的な幻覚は、幻聴です。その声はしばしば脅迫的、わいせつ、非難めいています。また2人以上の声が会話をしていたり、声が患者さんの生き方や行動を批判したりもします。周りの人からは、幻聴に聞きいってニヤニヤ笑ったり(空笑)、幻聴との対話でブツブツ言ったりする(独語)と見えるため奇妙だと思われたりすることもあります。
そのほかにも体感幻覚(実際にはありえない臓器の異常感覚を指す。例えば脳が燃えている感覚、血管の中を血が騒ぐ感覚など)や幻視を認めることもあります。
妄想とは、思考内容の障害であり、他人から見たら明らかに奇異で非現実的な考えであっても、それを信じて疑わず、他の者がそれを修正しようとしても修正不可能な状態をいいます。
統合失調症で見られる妄想は、被害妄想、誇大妄想、宗教あるいは身体に関する妄想などがあります。
- 被害妄想:「近隣の人に嫌がらせをされる」「道ですれ違った人が、すれ違いざまに自分に悪口を言う」等
- 誇大妄想:「自分には特別な能力があり、偉大だ」等
妄想に近い症状として、
- 「考えていることが声となって聞こえてくる」(考想化声)
- 「自分の意思に反して誰かに考えや体を操られてしまう」(作為体験)
- 「自分の考えが世界中に知れわたっている」(考想伝播)
のように、自分の考えや行動に関するものがあります。思考や行動について、自分が行っているという感覚が損なわれてしまうことが、こうした症状の背景にあると考えられることから、自我障害と総称します。
まとまりを欠いた発語とは、思考の形式の障害によって見られる症状です。具体的には以下の症状があります。
- 連合弛緩、話が逸れる、迂遠など
連合弛緩とは、思考のテーマが次々と脈絡なく飛躍し、連想に緩みが生じて話にまとまりがなくなります。当人はそのことに無自覚で、指摘されても気づきません。連合弛緩が進行すると、思考が支離滅裂になり、話す内容は他者にはまったく意味不明の「言葉のサラダ」と化していきます。
陰性症状とは、感情、意欲の障害をいいます。
感情の障害として、感情の動きが少ない、物事に適切な感情がわきにくい、感情を適切に表せずに表情が乏しく硬い、それなのに不安や緊張が強く慣れにくい、などの症状です。
意欲の障害として、やる気が出ず一日中何もせず無為に過ごしている。入浴や洗面などもせず清潔を保てなくなることも認められます。
さらに他人と交流をもとうとする意欲、会話をしようとする意欲が乏しくなり、無口で引きこもりの生活となる場合もあります(自閉)。
治療
統合失調症の患者さんは病識が障害されていることも多く、適切な治療が遅れてしまうこともあります。それだけに周囲のものが気づいて早期の治療を行うことが大切です。
薬物療法
抗精神病薬を中心とした治療になります。
薬物治療を進めていくうえでの原則として以下のことに注意しております。
- 治療の標的症状を慎重に定めていきます。
- 過去の服薬歴を伺い、使用経験のある薬剤で有効であった薬剤を調べます。逆に副作用で服薬が難しかったものの使用は避けます。
- 抗精神病薬の効果判定期間として、十分量使用したうえで4~6週間試す必要があります。
- 一度に複数の抗精神病薬の使用は望ましくないので、避けていきます。しかし、必要な場合は説明を行い、その都度、了解を得ていきます。
使用される薬剤としては、第一世代抗精神病薬(ハロペリドール、クロルプロマジン等)、第二世代抗精神病薬(エビリファイ、リスパダール、ジプレキサ、セロクエル、ロナセン等)の中で患者さんに合った薬剤を選択していきます。