適応障害(対人関係の悩み)
精神科を受診される方の多くが悩みを抱えており、対人関係に起因するものが少なくありません。悩み、ストレスを感じて受診されますが、主なストレスは、仕事、家庭、恋愛、学校、病気などで起こります。仕事については、職場の人間関係、異動による仕事内容や環境の変化、仕事量の多さや責任の重さなどがあり、家庭については、夫婦の不仲、義理の両親との関係、育児や教育の問題、経済的問題などがあり、他にも結婚問題、失恋、転校、いじめ、受験の失敗、慢性疾患、ガン治療などさまざまなものがあります。これらを見るとどのストレス因にも対人関係の問題は関わってくるだろうと思われます。
そしてこれらのストレス因に対する反応が強く現れ、日常生活、社会生活を送ることに支障をきたした状態を適応障害といいます。
症状
適応障害の症状は、ストレスと本人の置かれた状況、また本人の性格の傾向によって様々な症状が見られます。不安症状が目立つ場合は、不安、恐怖感、焦燥感等、それに伴う動悸、吐き気などの身体症状を認めます。うつ症状が目立つ場合は、憂うつ感、喪失感、絶望感、意欲低下、集中力低下等、うつ病と類似の症状を認めます。問題行動が目立つ場合もあり、勤務怠慢、過剰飲酒、ケンカ、無謀な運転などの年齢や社会的役割に不相応な行動を認めることもあります。身体症状が目立つ場合は、頭痛、腹痛、倦怠感、めまい等を認めます。
実際には、これらの症状が混合して現れることが多く、症状が複雑化します。
適応障害とうつ病
適応障害とうつ病は呈する症状は似ていることが多く、間違われやすい病態です。
適応障害では原因となるストレスがあって症状が出始めるまでの期間が、約3ヶ月以内とされており、またストレス因子を取り除いた際には6ヶ月以内に症状が軽減するか治癒するとされてます。
これに対してうつ病の場合には原因となるストレスの多くは特定されないままに終わることも多く、また心理的のみならず身体にも日常生活に支障をきたすほどの大きな影響を与えます。
治療
適応障害の原因となるストレスは社会生活を送るうえで避けて通ることのできないものも多いのが事実です。また同じ状況、ストレス因にさらされても適応障害になる人もいれば、ならない人もいるので、患者さんの性格傾向、ストレスへの耐性にも目を向けて支持的な関わりを治療の柱としていくことが大切です。ストレスに遭遇した際、それを乗り越えて適応することによって、ストレス耐性が高まり、ストレス対処能力も向上し、人格的向上がはかられると考えられています。しかし、素因やストレス経験が不十分なために、ストレス耐性が弱かったり、ストレスへの対処能力が低かったり、ストレスを乗り越えることができずに、心身の症状が強くなって持続したり、逃避的行動が現われたりして、適応障害の診断に至ります。
治療の主体は、支持的精神療法で本人がストレス状況を回避せず、ストレスに対応できるようになることを目指します、また必要に応じて薬物療法も行います。