心的外傷後ストレス障害(PTSD)
心的外傷後ストレス障害とは、生命や身体に脅威を及ぼし、強い恐怖感や無力感を伴い、精神的衝撃を与えるトラウマ(心的外傷)体験(災害、暴力、性暴力、重度の事故、戦争、虐待等)を原因として生じる、ストレス症候群です。
最近では、一般の方にもPTSDという言葉が広がり、またトラウマという言葉もよく耳にします。例えば仕事や失恋などが「トラウマになって」という使い方もされますが、本来の精神科で使用するトラウマとは、生命や身体に脅威がおよび、強い恐怖心や無力感を伴う出来事に遭遇し、何か月もたつのにその記憶を何度も思い出したり、苦しみ続ける心の傷を意味します。
PTSDには代表的な以下の3症状があります。
- 再体験症状:外傷的(トラウマ)出来事に関する嫌で苦痛な記憶が、突然よみがえる(フラッシュバック)、悪夢として反復されます。思い出した時、気持ちが動揺して、身体的症状として動悸や発汗が伴うこともあります。
- 回避・精神麻痺症状:外傷的出来事に対して、考えたり話したりすることを避けようとする、そのことを思い出させる事物や状況を回避する等がおこります。また興味や関心が薄れ、周囲からの孤立感を感じ、感情が麻痺したように感じられるようになります。
- 過覚醒症状:不眠、イライラ、集中力低下、過剰な警戒心、神経過敏(ちょっとした物音などでもひどくビクッとしてしまう等)が見られます。
合併症
PTSDの生涯有病率は男性で5%、女性で10%程度であり、女性の方が生涯を通じて発症のリスクが高いです。
また合併症では、他の精神疾患の合併が男女ともに80%~90%弱と高い研究結果も示されています。男性PTSD患者の合併している精神疾患は、診断別にみると、アルコール依存症52%、うつ病48%、行為障害43%、薬物依存35%、恐怖症31%であり、女性では、うつ病49%、アルコール依存症30%、薬物依存27%、恐怖症29%、行為障害15%との研究結果が示されています。(アメリカでの研究結果)
治療
PTSDに対して使用される薬剤はおもにSSRI(パキシル、ジェイゾロフト、フルボキサミン等)、三環系抗うつ薬(アナフラニール等)のほか、付加的に少量の抗精神病薬を使用することもあります。そのほか、心理療法としてカウンセリングなどを進めていきます。